先週の土曜日(10月19日)、平塚市美術館で開催中の「伊豆市コレクションによる天才たちの若き日~横山大観から速水御舟まで」に行ってきました。
この特別展は、今年2月に伊豆市と平塚市が友好都市提携協定を結んだのを記念して開催されたもので、修善寺温泉の老舗旅館「新井旅館」の3代目主人・相原寛太郎氏が明治の終わりから昭和の初めにかけて収集した作品を中心に、横山大観、今村紫紅、小林古径、安田靫彦、前田青邨、速水御舟といった近代日本画を代表する画家たちの若いころの作品が展示されています。
この日は学芸員さんのギャラリートークがある日で、担当学芸員・江口さんのユーモアをまじえたわかりやすい解説で、それぞれの作品や画家たちにより親しみがわいてきました。
相原寛太郎さんは、自分でも日本画を習っていた方で、才能はあるけどまだ無名の若い画家を自分の旅館に招き、食事を出したり、寝泊まりさせたりして、絵を描かせたとのことで、当時すでに有名だった大観はVIP待遇で、離れの部屋を用意するほどの徹底ぶりだったそうです。
入口に行ってすぐ右にある安田靫彦の「吉野訣別」は、なんと靫彦が数えで16歳の時の作品(下のパンフレット左の上から2番目)。仕上げがまだ未熟なところもあるが、今でいえば中学生のころから才能を発揮していたといったとのお話でしたが、解説を聞かなければとても16歳の少年の作品とは思わなかったでしょう。
他にも、細部にこだわる小林古径の「箏三線」(左の一番下)、画面全体に空気感を感じさせる菱田春草の「秋郊帰牧」(右の一番下)、右隻に広がりのある松と幹にとまる鳥、左隻にまっすぐの竹と飛んでいる鳥といった具合に画面を対照させるところに琳派の影響も感じられる大観の六曲一双の屏風「松竹遊禽」(一番上)、すりガラスのような絶妙なタッチで燈籠を描いた前田青邨の「燈籠大臣」などなど、主な作品ごとにポイントも解説していただきました。
(パンフレットも充実しています。見開きになっていて、中には大観と御舟が渡欧する前の壮行会のときに新井旅館中庭で撮った写真も掲載されています)
また、「西の栖鳳、東の林響」とまで言われたが40歳の若さで亡くなった石井林響、浮世絵のような着物の鮮やかな色合いを表現する広瀬長江(ちょうこう)といった、今まで知らなかった画家の素晴らしい作品に出会うのも展覧会の大きな魅力です。
安田靫彦は、第1回文展に出した「豊公」が岡倉天心に気に入られ、茨城県の五浦(いづら)に呼ばれたとの説明書きがありましたが、天心や五浦といった文字を見ると、先日試写会で見た映画「天心」で天心役を演じた竹中直人さんの顔が思い浮かんできてしまいます(10月10日のブログをご参照ください)。映像の影響って大きいですね。
「天心イヤー」にふさわしいこの特別展。
100点以上ある伊豆市コレクションを保管している地元の修善寺郷土資料館では、スペースの都合で10点ほどの作品を1か月ごとに入れ替えをして展示しているので、一挙に64点も見ることができるなんてまるで夢のような企画です。
会期は11月24日までです。ギャラリートークももう一回あります。
詳細は平塚市美術館のホームページでご確認ください。
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http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/2013206.htm