2022年12月23日金曜日

根津美術館 企画展「遊びの美」

東京・南青山の根津美術館では、遊びをテーマに、同館が所蔵する絵巻物や古筆、新春を迎えるのにふさわしいきらびやかな金屏風が楽しめる企画展「遊びの美」が開催されています。

展覧会チラシ

展覧会開催概要


会 期  2022年12月17日(土)~2023年2月5日(日)
休館日  毎週月曜日 ただし1月9日(月・祝)は開館、翌10日(火) 休館
     ※年末年始12月26日(月)から1月4日(水)まで休館
開館時間 午前10時~午後5時 (入館は閉館30分前まで)
入場料  オンライン日時指定予約
     一般 1,300円 学生 1,000円
     *障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、中学生以下は無料
会 場  根津美術館 展示室1・2

※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は記者内覧会で美術館より特別に許可をいただいて撮影したものです。
※企画展「遊びの美」に展示されている作品はすべて根津美術館所蔵です。

展覧会の詳細は同館公式サイトをご覧ください⇒根津美術館

展覧会の構成
 ・子供の姿
 ・雅な遊び
 ・武芸をみがく
 ・市井の楽しみ

それではさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。

子供の姿


昔も今も子供たちはどんな時でも遊びを見つけ出す遊びの天才。
菅原道真を祀る北野天満宮の社殿を造営する場面が描かれた重要美術品「北野天神縁起絵巻」でも、一生懸命に仕事の手伝いをしている子や、大人たちが作業をしているそばで遊んでいる子たちが生き生きと描かれています。


重要美術品 北野天神縁起絵巻 6巻のうち第5巻(部分)
日本・室町時代 16世紀


左端には、板の虫食い穴が讒言によって失脚した道真の怨念のこもった一首の歌であることがわかり、人々が騒いでいる様子が描かれています。
あわてて駆け寄ってくる人もいて、それまでの活気のある場面とは一転して、緊迫した様子が伝わってくる場面です。

重要美術品 北野天神縁起絵巻 6巻のうち第5巻
日本・室町時代 16世紀


雅な遊び


桜の花が咲き乱れる中、真剣なまなざしで宙に浮かぶ鞠を追いかける公家たちが描かれた重要美術品「桜下蹴鞠図屏風」。

蹴鞠は単に体を動かすスポーツではなく、技も作法も一定の形式が整い、難波流や飛鳥井流といった流派も形成されて、教養を高め社会の中でより良く生きるための手段でもあったのです。
左隻に描かれた従者たちは主人である公家たちを応援しているのかと思ったら、退屈してあくびをしたり、居眠りをしたりしているのですね。

重要美術品 桜下蹴鞠図屏風
日本・江戸時代 17世紀


平安時代の人たちにとって和歌は重要なコミュニケーションの手段。
そして、宮中で行われる歌合は、左右のチームに分かれて歌の優劣を競う文学的な遊びでした。
今回の企画展で初公開されるのは、「上東門院彰子菊合残巻(十巻本歌合)」。
一番右には歌の優劣を判定する「判者」、その隣には「左方人」「右方人」に分かれた参加者の名前、歌の題材と続き、その左には読まれた和歌が記されています。

上東門院彰子菊合残巻(十巻本歌合) 伝 宗尊親王筆
日本・平安時代 11世紀 植村和堂氏寄贈


こちらは歌が書かれた懐紙ですが、ただの懐紙ではありません。
歌合で詠み手本人が歌を書いたとても貴重なもので、筆者は蹴鞠の飛鳥井流の祖としても知られる飛鳥井雅経。
練りに練って作り上げた歌を歌合で提出する時の手に汗握る緊張の瞬間が目の前に浮かんでくるようです。


重要文化財 熊野類懐紙 飛鳥井雅経筆
日本・鎌倉時代 12~13世紀


武芸を磨く


武士にとっていくさに備えて武芸を磨くことは重要な仕事でした。
そして、それは天下泰平の世になった江戸時代でも変わらないことでした。

この金屏風には、馬上から先端をカバーした矢で犬を射る競技「犬追物」の様子が描かれています。

馬場の周囲には多くの見物人の姿が見られます。
リラックスした見物人たちの様子を見ると、武士たちにとっては馬術や弓術を訓練する真剣な場であっても、当時の人たちにとってはきっと楽しみな娯楽の一つだったのでしょう。

重要美術品 犬追物図屏風
日本・江戸時代 17世紀


NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも出てきた場面が見えてきました。
右隻に描かれているのは源頼朝が行った富士の巻狩。
巻狩は武士の軍事訓練の場なのですが、この時は、前年に征夷大将軍に補任された源頼朝が御家人たちに自らの威光を示す意味合いもあったのです。

ちなみにこの屏風の主題は富士の巻狩でなく、その際に行われた曽我兄弟の仇討ちです。

曽我物語図屏風 日本・江戸時代 17世紀



市井の楽しみ


庶民たちの遊び、庶民たちの遊びの代表的なものの一つはお祭り。

「洛中洛外図屏風」には、右隻の山鉾巡行、左隻の神輿渡御はじめ、今も続く京都・祇園祭の街じゅうが盛り上がった様子が生き生きと描かれています。

洛中洛外図屏風 日本・江戸時代 17世紀
福島静子氏寄贈


江戸時代に庶民の間にまで広まったのが「お伊勢参り」。
伊勢神宮に参拝するのが目的でしたが、参拝者にとって道中の観光も大きな楽しみでした。
下の写真右は「伊勢参宮図屏風」の左隻です(右隻は名古屋市博物館蔵)。

左の「風流踊図衝立」は、小さな子供をふくむ老若男女100人以上もの庶民が踊る様子が描かれていて、鉦や太鼓の音や踊る人たちの歌う声が聞こえてきそうなにぎわいです。


右 伊勢参宮図屏風 左 風流踊図衝立
どちらも 日本・江戸時代 17世紀



テーマ展示も同時開催中です!


展示室4 古代中国の青銅器



展示室4 展示風景

古代中国の青銅器が展示されている展示室4の特集テーマは、2023年の干支にちなんで青銅鏡展示「兎をさがせ!」。
中国・隋時代から唐時代の青銅の鏡が展示されているので、ぜひ兎を探してみてください。
意外と難しいかもしれません。

下の写真の一番左は青銅鏡の鏡の面を真鍮で再現したもの。
今回の展示に向けて磨いたとのことで、初めて鏡の面を見ましたが、くっきりと自分の顔が映ったのには驚きました。


青銅鏡展示「兎をさがせ!」 展示風景


港区青銅器サミットのご案内


泉屋博古館東京では、「不変/普遍の造形」展(会期:2023年1月14日~2月26日)が開催されて、同じ港区にある根津美術館、松岡美術館の青銅器コレクションとあわせて、この時期には港区に中国・殷周時代の青銅器が密集することになります。

その機会に3館の学芸員さんが登壇するトークイベント「港区青銅器サミット」が1月21日(土)に泉屋博古館東京で開催されますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。

詳細は泉屋博古館東京のサイトをご覧ください⇒港区青銅器サミット


展示室5 山水



展示室5 展示風景

中国・南宋の馬麟や、拙宗等揚と名乗っていた頃の雪舟の山水画が展示されていて、山水画ファン(筆者もその一人)にはたまらない、この落ち着いた空間の中で学芸員さんの特におススメはするのは「披錦斎図」。

鎌倉・円覚寺の梁宗という少年僧を慕う人物が、夢で見た書斎を描かせ、その少年僧に送ったという作品で、夢に出てきた書斎「披錦斎」が、桃源郷を思わせる牧歌的な景色の中に浮かぶように描かれている幻想的な光景が見られます。

披錦斎図 宗甫紹鏡ほか六僧賛
日本・室町時代 寛正5年(1464)

展示室6 除夜釜-新年を迎える-


展示室6には、新年を迎えるのにふさわしく、大晦日に開かれる除夜釜、2023年の干支の兎や吉祥にちなんだ茶道具が展示されています。


展示室6 展示風景


とてもユニークな茶碗を見つけました!

江戸時代には暦(カレンダー)が書かれた茶碗は年末の贈答品として広まったそうですが、この茶碗には正式な暦ではなくユーモアあふれる縁起や架空の年号が書かれているのです。
こんなおめでたい茶碗なら、贈る方も受け取る方も楽しそうです。

志野暦茶碗 銘 年男  美濃
日本・江戸時代 17世紀



NEZU MUSEUMオリジナルの新商品はロールシール〈茶道具シリーズ〉


ミュージアムショップでは、新商品「ロールシール〈茶道具シリーズ〉」(税込700円)が発売中です。
根津美術館所蔵の茶道具の名品13種類を約100枚のロールシールにしたもので、手紙の封かんや、プレゼントの袋を閉じるのに貼るとオシャレです。

ミュージアムショップ


雅楽を聴きながら絵を見る体験もできます!


今回の企画展「遊びの美」のテーマの一つ「雅な遊び」にちなんで、雅楽を聴きながら絵を見るイベントも開催されます。

演奏するのは東京藝術大学雅楽専攻生、卒業生、講師のみなさん。

演奏日時は2023年1月7日(土)、1月29日(土)の13:30、15:00の2回で、いずれも20分程度。
地階の講堂で演奏される雅楽が、1階展示室に聴こえてくるという、まさに「雅な遊び」が体感できるイベントです。

他にも企画展「遊びの美」のスライドレクチャーも開催されますので、詳しくは根津美術館公式サイトでご確認ください⇒根津美術館


楽しさいっぱいの企画展「遊びの美」をご覧いただいて、みなさま良い年をお迎えください!